リードを生み、育て、見極めるツール MA・CRM・SFA

はじめに

フロント業務に携わっていないとなじみが薄いかもしれませんが、本日は、MA・CRM・SFAといった営業やマーケティング業務に使われるツールをご紹介します。 

ツールの歴史

CRM・SFAは20年以上前に出てきたツールです。機能の拡大と共に、社会背景もあり、CRM導入を希望する方の理由に変化が出てきていると思います。 

20年前に、CRM・SFAの導入理由になったのは「一元化」そして「効率化」「標準化」が中心でした。 

「各営業マンの手帳に入っているような情報を会社で共有するために、システムを入れましょう」というところから始まったのが一元化です。 

その後、SFA領域などで、月次資料作成や日々の報告を効率的に進めたいという「効率化」、よくできる営業社員のやっていることをトラッキングして、会社標準の動きとしてみんなで同じ動きをしようという「標準化」などの目的が目立ちました。 

ここ7,8年の話では、「デジタルマーケティングを進めるために、MAとCRMを一緒に使いましょう」という話が目立つようになりました。またこの1,2年ではコロナ禍で営業に出向けないためにMAに目を向ける会社様が増えました。 

中小企業においては、このあたりが現在よくお伺いする導入きっかけとなっています。 

そして、このところ話題に上がってき始めたテーマが「顧客体験」や「DX」ということになっています。これはまだまだツールの活用意義として大きな成果を上げるのには発展途上のようです。 

リードを「生み・育て・見極める」とは? 

この講座のタイトルは「リード」という言葉から始まりますが、リードとは何でしょうか? 

簡単に言うと、「お客様リスト」です。お客様の氏名や電話番号、会社名などの情報です。 

元々営業というと、「購入してくれそうなお客様を探し出す」仕事に近いところがあり、すぐに検討に入るお客様の情報だけを大事にして、その他の情報はあまり扱っていなかったところがあります。 

CRMが使われるようになったことや、それに伴い周りの会社の「囲い込み」傾向が強くなり、新規に顧客を獲得することへのハードルが上がるようになりました。 

そこで一度取得した「リード情報」を再利用できないか?今は購入しないけど、将来購入してくれるお客様として大事にしようとするのが今の状況です。 さて、一口に「リード」といっても色々な段階があります。

リードのライフサイクル
【図1】リードのライフサイクル

上記の図では、左がまだ商品・サービスに全く興味がない段階のお客様。右に行くほど商品やサービスに愛着を持っているお客様という図です。 

リードはよく「温度感」で形用されます。「クール」なリードとは左側にいるお客様「ホットリード」というのはより購入に近いお客様のリードを指します。 

まず左の興味度が薄いお客様としては、例えば「会社のブログを1度読んだ」お客様です。 

こういった方に対して、ブログのコンテンツを充実させ、繰り返し訪問してもらい、その後セミナー参加や、資料ダウンロードを促します。そういった登録をしてもらうと、会社としてはお客様情報がとれます。これがリードです。【リードを「生む」】 

このリードに対して、一斉配信メールや電話などを使って、お客様にさらに商品・サービスに興味を持っていただきます。場合によっては、お客様が現在どんな状況にあるのかをヒアリングするために電話を使うこともあるでしょう。 

このようにリードに対して(一斉対応で)働きかけることで、興味度合いを高めていくのが「リード育成」というフェーズになります。こういった活動をメールや電話でオフィスにいながらにして行うのが「インサイドセールス」と呼ばれる方法です。【リードを「育てる」】 

ある程度リードが温まってきたら、最後の一押しを個別営業が担当するというやり方を取ることがあります。例えば「見積もりの相談をしたい」や、「個別の課題を消していきたい」という段階です。こういった個別営業に引き渡し、最後のクロージングを個別対応してもらいます。そのように引き渡すためには、リードの情報(興味情報)がある程度見えていないと、引き渡せません。情報が正しくないと、個別対応したお客様がいつも無関心で営業の時間が無駄になったり、逆に営業の個別対応先がなくて、遊んでしまうといったことが起こります。【リードを「見極める」】 

さて、以前は受注する(初回購入してもらう)ことが営業のゴールとされるマーケティングモデルがよく使われていましたが、最近は先に述べたように新規リード獲得が難しくなってきた背景もあり、購入した後のフォローも重視されます。サブスクリプション型のビジネスであれば、より長く継続してもらうために、そうでない場合もしっかり購入した商品に満足してもらい、ファンになってもらうために、サポートを丁寧に行うことを重視する傾向にあります。 

各ツールでできること

MA・CRM・SFAの捉え方は決まっておらず、人によって考え方にずれがありますが、私の考える範囲は下記の通りです。 

各ツールの領域
【図2】各ツールの領域

MAは、一斉対応領域、Unknownユーザーと言われている(リード情報を取得していない)お客様の管理から、個別対応に入る前までと位置付けました。CRMは獲得したリードに対しての記録から始まりますから、「リード育成」の領域から購入後のカスタマーサポートサービスまで、顧客の情報、状況とコンタクト履歴の管理。SFAは営業管理なので、営業活動のサポートをするツールだと考えてこのような図にしています。 

「個別化」らしさ

さて、前項では、特にMAの領域では「一斉対応」と申し上げました。確かにMAのAは「Automation(自動化)」で」あり、効率的に1000や100000のリストの対応をするには一斉に扱うということをしなくてはなりません。しかし、大事なことは、お客様(受信者)にとって一斉に扱われていると思われない対応をすることです。 

たとえば、ちょっと商品の名前を聞いたことがあるというレベルの方に「今月まで有効の10%Offクーポン」を配布しても、「売り込まれている」と思われるかもしれません。逆に、既に購入を決めているお客様に対して、その商品の必要性をくどくどと説明しても読まれないばかりか、気持ちにズレが出てしまい、検討をやめてしまうかもしれません。各お客様の熱量の他、イベントをご案内する場合は会社の所在地、また商品の購入属性に合う企業規模かどうかなど、様々な角度でセグメント分けしたリストを活用することで、より価値を感じていただけます。 

機能・拡張性

【図3】各ツールの機能
【図3】各ツールの機能

各ツールの持っている機能は上記のようになります。MA領域は、リード獲得に関する機能が中心になりますが、ツール自体でリードが増えるということはありません。MAツールの役割は、リードを増やすために状況を分析したり、効果的な情報発信をしたりすることです。 

CRM領域は先にもお話した通り、リードを取り扱うためのツールです。「Web to Lead」とは、Webフォームを設置してそのフォーム経由で入ったリードが自動的にCRMに入ってくる仕組みです。またリードが入ってきたときには、お客様への登録お礼メールや社内への通知メールが自動で送信される機能がついていることが多いです。こういった自動化は、少人数チームの業務の効率化やミスの低減に大きく貢献します。 

SFAに関しては、やはり営業で必要な内容の管理になります。一番大事なのは現在の商談がいくつかり、来月はどのくらい受注が見込めるかが一目で分かったり、どんな営業社員でも同じような営業活動ができるための標準化といったところが、活用の肝になるかと思います。 

AI分野 

MA・CRM・SFAツールにもいろいろなところでAI機能が付き始めています。 例えば下記のようなものになります。 

チャットボット

Webサイトに設置するチャット機能にチャットボットのエンジンが入っていて対応してくれます。 

スコアリング

「見極め」を効率化するために、お客様のアクションに点数をつけること。例えばメールを開封したら〇〇点、メール内のURLリンクをクリックしたら××点、見積もり請求をしたら△△点、のようにリードに点数を加算していき、最終的に100点になったら営業に引き渡すといったような使い方があります。 

架電時刻の最適化

架電結果が記録され、その結果から各リードに対して何時に架電すれば良いかを提案してくれる機能です。アウトバウンドコールなどに注力しているしている業務では、毎回繋がらない電話をかけ続けることが大きなロスになります。こういった問題を改善しています。 

メール配信時刻の最適化 

こちらも注目度が高い機能です。今は皆さん日々メールボックスにメールマガジンが溜まっています。やはりメールボックスを開いた時に下に溜まっている状態のメールは見られませんので、できればメールボックスを開いている時刻に配信したいものです。これも架電時刻と同じように過去の履歴からメールが開かれる時刻を予測し、一斉配信メールであっても、例えば24時間以内の一番開かれやすそうな時刻に配信するという機能です。 

最後に「導入の3つのポイント」

ここまで、MA・CRM・SFAツールの概要についてお伝えしましたが、いざ導入しようというときに大事なことを3つ紹介します。 

1) 「何がしたいか?」明確にしてから導入する。

これはどんなツールでも共通の話だとは思いますが、「課題感」「目的」を明確にして導入するということが大事です。補助金があるから、や、同業他社がみんな導入しているという理由で導入をしても、効果測定もできません。導入までには目的を明確化して、社内の担当者で共通の目的を持ち導入することが大事です。 

2) 定着がキー 

こういったツールは結局現場が日々の活動に活用して初めて意味を持ちます。現場が日々データ登録や活用をするかどうか、チェックする方法を併せて事前に決めておくことが必要です。特に導入後半年などで定着するように手厚くフォローします。また使われない場合には、無理に活用させることだけを優先して業務が滞っては本末転倒ですから、負担の少ない方法に切り替えることなども含めて検討が必要になります。現場の意識や頑張りだけに依存するのではなく、仕組みとしてチェックし、無理の無い運用にしましょう。  

​3) ある機能を全て使おうとしない。小さい一歩をきちんと「着地」させる。

ツールで実現したいことが山のようにあり、機能を知るたびすぐ使いたいということになり、いつまでも本稼働できないというケースがよくあります。組織のスタイルにもよりますが、環境が許す範囲で小さく始め、達成をもって次のステップに進むという形を作ることが大切です。特に上長の方の要望が日々拡大してしまい、要件の収集がつかないというケースもよくあります。その場合でも、フェーズを分けることや、出てきた要望をきちんと精査するなどし、着地させるようにしましょう。 

最後に

皆様がよりよいツールを選定、活用され、日々のマーケティング活動や営業活動のステップアップに貢献できればと願っております。 

講師:中山 幸子(ITコーディネータ)>>