『宇宙開発利用加速化戦略(スターダストプログラム)』~DXはいよいよ宇宙開発へ~

スターダストプログラム

皆さん、スターダストプログラムやアルティメス計画はご存じでしょうか? 

月面を無人で耕すショベルカー、月面基地の建設などSFの世界がいよいよ現実的になってきました。
最近では、日本人宇宙飛行士がアルティメス計画に参加というニュースも流れ、まさに建設やDX技術は今や地球を超え宇宙にも広がっていくのです。

今回は、新年ということもあり未来に期待が持てるテーマとして、わが国の宇宙開発のスターダストプログラムのうち、デジタルツイン技術やAIなどDXを駆使した企業の2つのプロジェクトをご紹介します。

キーワードはシミュレーションと自律です。

1.シミュレーション(活用技術はデジタルツイン)

「デジタルツイン技術」は、現実とサイバー空間を組み合わせ、災害や建設などのシミュレーションを行うことができます。よくテレビ等で大地震が発生した際、実際の建物や町などの画像にデジタル加工された津波が押し寄せいかにも災害が発生したようにできる技術ですが、本プロジェクトではこれを宇宙(月面)で活用しようとしています。

【株式会社小松製作所 月面建設機械のデジタルツイン技術構築
国土交通省 宇宙無人建設革新技術開発資料より】
月面では現物へのアプローチが困難なため、現場環境や実機を精度良くサイバー空間に再現する「デジタルツイン技術」が非常に重要となります。

? サイバー空間上に油圧ショベルを作成・動作させ、地球上の実機との挙動と比較することにより、シミュレータの精度を検証する。
② サイバー空間を月面環境に設定し、シミュレータ上の車体挙動を確認することにより、月面建設機械の課題を抽出する。

つまり、はるか遠い月面での建設機械の挙動を事前にシミュレーションするためにデジタルツイン技術が使われるのです。

2. 自律(活用技術はAI)

 本プロジェクトでは、「自律」が重要であり、AIや仮想空間上でのシミュレーション・プラットフォームを活用し、地球とは全く異なる環境下でも機械の自律走行、自律施工が実現できるようにするものです。

【清水建設株式会社 建設環境に適応する自律遠隔施工技術の開発 -次世代施工システムの宇宙適用 国土交通省 宇宙無人建設革新技術開発資料より】

月面での建設活動においては、通信遅延により地球からの信号は数秒単位の遅れが生じる。このような環境下で安全に作業を実行するためには、地球側での判断を極力少なくした自律施工が必要となる。本技術開発では、人工知能により建機側の判断範囲を広げ、自律分散型に近い施工を可能とするシステムを構築し実証する。また、月のような特殊な環境に おける認識システムを構築する手法の確立を目指す。

【内容・ポイント】

搬入された土砂等を平らにならす敷均(しきならし)を行い厚さ、エリア等の単純な指示のみで、人工知能が作業箇所までの走行経路や敷均し作業の経路を生成するため、より高度な自律施工が可能となる。環境認識システムの基盤ができることで、他建機への展開も可能となり、自律施工建機の多様化につながる。

本メルマガではテキストのみですので、以下から詳細情報を参照することができます。
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001602686.pdf

上記二つ以外にも様々な技術研究がなされており、アポロ17号の時は月面に有人が到達することがミッションでしたが、本プロジェクトは近未来人間が生活するための拠点化も想定しています。そのためにはこうした最新鋭のデジタル技術が欠かせないのです。

よくDXは守りのDXと攻めのDXに分類されますが、前者は社内システム等の整備によって業務効率化やコスト削減が中心、後者は付加価値やビジネスモデルの抜本改革、社会課題解決などが中心です。

つまり本プロジェクトはDX技術で、社会課題どころか地球レベルの課題(人類存亡)解決する壮大な計画を、国交省、文科省、内閣府は企業と協調して実施しようとうしているのです。とかく景気動向、地球温暖化、政治不信など暗いニュースが先行する2023年でしたが、2024年は未来に向かって日本の持つ技術が世界を席巻できればいいですね。

(ITコーディネータ 太田 雅一