ロジカルシンキングベースの課題解決アプローチ(実践編)

このセミナーは中小企業診断士の理論政策研修のテーマを一部改変したものをお届けしています。昨年は入門編でしたが、実際にはどのようにやるのかというリクエストにお応えして実践編に組みなおしたものです。

研修の目的は・企業の真の課題を見つけ出し正しい解決方法を見つけ出すことにあります。

企業の経営者は必ずしも課題を提示してくれるとは限りません。ヒアリングや事前調査の中から課題をある程度想定し検証していく必要があります。まだ課題設定が正しくても単に解決策を提示するだけでなくそこに至るプロセス、解き方を共有していく必要があります。

コンサルティングマトリックス

問題と課題の違いを明確にしておきましょう。問題とはあってしかるべき姿と現状との差であり、課題とはあるべき姿と現状との差です。課題に着目しながらコンサルティングマトリクスを見てみましょう。解決策と課題が判明しているか否かという2軸でコンサルティングを分類しています。

工数提供型/知識提供型/課題解決型/押しつけ型の4つのパターンがあります。

ロジカルシンキングとは

できれば顧客の課題を発見してあげて一緒に解決する課題解決型のコンサルティングを目指したいものです。この領域が一番付加価値が高い領域となります。

ロジカルシンキングの基本構造

ロジカルシンキングの基本はロジックツリーとMECE(ミーシー)です。ロジックツリーはひとつの事象に対していくつかの構成要素に分解することです。あるいはひとつの課題に対して解決策をいくつか用意することです。その分解にミーシー(もれなくダブリなく)を利用することです。最初の分解をゴールデンカットといいますがこれが非常に大事です。

最初の分解を間違えたり粒度をそろえなかったりすると、そのあといくら正しい分解をしても正しい答えには行きつかないのです。逆にゴールデンカットがしっかりしていると、その展開は有益なものになってきます。

ロジカルシンキングのピラミッド

ロジックツリーを利用するメリットは全体を俯瞰することにより全体最適を導けることと構造化することにより課題を整理できることにあります。

MECEを実現する考え方

もれなくダブリなく候補を出すといってもそう簡単に思い浮かばないとおっしゃる方もいらっしゃると思います。そのような場合、下記のようにいくつかのパターンで考えてみてください。

①要素分解する

②因数分解する

③時系列に分解する

④コンサルフレームを使う

仮説思考で問題を解く

ロジカルシンキングで課題解決するときとても大切な考え方が「仮説思考」です。仮説思考は帰納法によって鍛えられますが、帰納法というのはいくつかの観察事象から導き出される仮説を立てることです。事業や業務の課題解決策は現実問題として確定的なものからではなく仮説から検証して導くほうが効率的です。仮説を持たない場合、網羅的に実施してみることになり無駄が多いのです。

全体最適の視点で見る

ロジックツリーの中でも課題を解くためのツリーをイシューツリーといいます。皆さんも会社の業務の中で意識することなく利用していると思います。上位の課題を達成するためのサブ課題は何かを考えます。サブ課題の粒度まで落とすと解決策は具体的に出てきやすいのですが数多くのサブ課題に対応する解決策は実際の事業活動では網羅的に採用されることは多くないでしょう。事業活動にはリソースの制限があるからです。20:80の法則を利用して重要な解決策にリソースを投入して多くの成果を上げることが求められています。その重要な解決策を見つけることが「筋の良さ」であり、これは経験がものをいう領域です。(下図参照)

ロジカルシンキング

バリューチェーンの考え方

M.ポーターのバリューチェーンはご存じの方も多いでしょう。このバリューチェーンはどのようにして使うのでしょうか。バリューチェーンは企業の競争戦略を策定するときに活躍します。自社のプロセスを並べてそれぞれのプロセスで競合他社に負けない差別化できるプロセスは何かを検討するためのものです。

バリューチェーンの考え方
バリューチェーンの考え方

各プロセスに対して強み弱みを考えてみましょう。漠然とSWOT分析をするのではなくプロセスごとに分析することで網羅性を担保することができるのです。

※業種ごとのプロセスの説明は省略します。動画をご覧ください。

課題解決用テンプレート

ここでは以下の3種類について説明しています。

①課題展開図

  企業のかかえる課題を戦略課題から主要課題、検討課題へと粒度を細かくしながら分解していく図です。ここではロジックツリーの展開方法が用いられます。ゴールデンカットが戦略課題になるわけで、ここを間違えると思うような結果が出てきません。検討課題の粒度まで分解すれば対応する解決策が導き出しやすくなります。

②ビジネスキャンパス

これは課題の解決の前に具備すべき要件を整えているかをチェックするためのフレーム ワークでスタートアップ企業に適用すると重宝します。ビジネス全体をマーケティング領域、エンジニア領域、ファイナンス領域に分けて、それぞれの領域で必要な仕掛けやリソースが整っているかどうかを見ます。不十分な場合はそれ自体が課題となります。

③経営デザインシート

これは内閣府が推奨している経営理念をもとにフレームワークで現状(ASIS)からあるべき姿(TOBE)を見通すものです。そのギャップを課題ととらえ、必要なリソースを考えるものです。ともすると現状の延長線上で未来を考えやすいのですが未来から逆算する考え方で課題解決しようとするものです。

 

講師:並木 政之(ITコーディネータ/中小企業診断士)>>